東洋大学創設者・井上円了が確立した妖怪学とは?
東洋大学の創設者である井上円了は、日本で初めて妖怪を学術的に研究した人物です。1886年に不思議研究会を設立し、全国から約500通の妖怪・幽霊の報告を集めて体系的な研究を行いました。
この研究は後に「妖怪学講義」として24冊にまとめられ、現代の民俗学研究の基礎となっています。
井上円了による妖怪の6つの分類体系
井上円了は、明治時代の哲学者であり、東洋大学の創設者としても知られています。彼は、迷信を打破し、人々を啓蒙することを目指し、その一環として妖怪研究に取り組みました。
単なる迷信として片付けるのではなく、その発生原因を科学的に解明しようと試み、妖怪を6つに分類しました。
- 虚怪(人間の思い込み):幽霊、テレパシーなど
- 偽怪(人為的に作られたもの):UFO.UMAなど
- 誤怪(自然現象の誤認):オオカミの遠吠えを妖怪の仕業と考えるなど
- 物怪(物理学で説明可能):狐憑き、カッパなど
- 心怪(心理学で説明可能):統合失調症の患者が幻覚を見るなど
- 真怪(現代科学でも説明困難):古くなった道具が妖怪になるなど
この分類方法は、現代でも妖怪研究の基準として参照されています。
東洋大学における現代の妖怪研究
東洋大学では井上円了記念博物館を設置し、妖怪研究の資料を一般公開しています。展示では、江戸時代の妖怪画や円了の著作、研究ノートなどを見ることができます。
学術研究としても、国際日本学部を中心に妖怪文化研究が続けられています。これらの授業では、妖怪の歴史や文化、民俗学的な視点からの妖怪研究などを学ぶことが可能です。
妖怪学から学ぶ科学的思考法
井上円了の妖怪学は、単なる怪異の研究ではありません。「なぜ妖怪は生まれたのか?」「妖怪は本当に存在するのか?」といった根源的な疑問から始まります。この「なぜ?」という疑問を持つことは、科学的思考の出発点です。
古文書や文献、民俗資料、聞き取り調査など、多様な情報源から妖怪に関する情報を集め、それらを比較検討することで、妖怪の実態に迫ることができます。
円了の妖怪学では、身の回りの不思議な現象を科学的に解明し、迷信や誤った考えから人々を解放することを目指していました。
この研究姿勢は、現代の科学教育にも通じる考え方といえます。
井上円了の研究成果と現代への影響
妖怪学の研究成果は、現代の心理学や民俗学研究にも大きな影響を与えています。
特に「こっくりさん」などの心理現象の科学的解明は、集団心理の研究の先駆けとなりました。全国での講演活動を通じて、科学的思考の普及にも貢献しています。
東洋大学妖怪学のまとめ
東洋大学の妖怪学は、創設者・井上円了の先進的な研究から始まり、130年以上の歴史を持つ学術分野です。現代でも井上円了記念博物館での展示や研究活動を通じて、その伝統は受け継がれています。
妖怪という身近な題材から科学的思考を学ぶという独自のアプローチは、今なお多くの示唆を与えてくれます。